\(x^n+y^n=z^n\) の整数解

タイトルだけ見て「フェルマーの最終定理だ! 整数解は存在しないよ! おわり!」と早とちりしないでください。この方程式だけでは \(n\) に制限がありません。フェルマー・ワイルズの定理は、\(n≧3\) のとき \(x^n+y^n=z^n\) を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在しない、という定理です。では、\(n < 3\) のときはどうなるのでしょうか?

というわけで、この方程式を \(n=2,1,0,-1,…\) の場合についても考えてみたいと思います。

さて、この方程式を考えるにあたっては、ひとまず \(n\) がどの整数の場合でも、 \(x,y,z\) はいずれも1以上の整数についてだけ考えることにします。零と負の数を除外する理由は次の通りです。零については、例えば \(x=0\) を認めると \(y=z\) という自明な解しか得られないからです。負の数については、\(n\) が偶数の場合は、正の解 \(x,y,z\) が見つかれば、それぞれを負の数 \(-x,-y,-z\) で置き換えることができるからです。 \(n\) が奇数の場合にも、 \(x^n,y^n\) の項を移項することで、\(x\) と \(y\) の正負を置き換えることが可能です。

さらに、正の整数 \(x,y,z\) は互いに素である、という条件を付けます。互いに素とは、最大公約数が1であることです。例えば \((3,6,2)\) の組は、3数を同時に割り切る正の整数は \(1\) しかありません。 \(2\) と \(6\) だけならともに \(2\) で割り切れますが、 \(3\) は \(2\) で割り切れないため、3数の組では互いに素ということになります。方程式の解として互いに素な3数の組 \((x,y,z)\) が見つかれば、3数を任意の正の整数 \(r\) 倍した \((rx,ry,rz)\) も方程式を満たすことがすぐに分かります。

この絞り込みにより、今回考えたい問題は次のように整えられます。

問題
それぞれの整数 \(n\) に対して、等式\[ x^n+y^n=z^n \tag*{… ★} \]を満たす互いに素な正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在するか。存在すれば、どのように表せるか。

なお、 \((x,y,z)\) が方程式の解であるとき、 \(x\) と \(y\) を交換した \((y,x,z)\) も解ですが、これらは同一のものであると見なすことにします。これは、例えば \(n=2\) で \((3,4,5)\) が見つかれば、同じく等式を満たす \((4,3,5)\) を改めて見つける必要はないということです。

\(n≧3\) のとき

冒頭で述べたとおり、フェルマー・ワイルズの定理より、 \(n≧3\) の場合に等式 \(★\) を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在しません。ここでは証明しませんが、「フェルマーの最終定理」をキーワードに調べれば、詳しい解説が見つかると思います。

\(n≧3\) に対して、求める整数の組 \((x,y,z)\) は存在しない。

\(n=2\) のとき

等式 \(★\) は、 \(x^2+y^2=z^2\) になります。三平方の定理で見慣れた形ですね。 \(3^2+4^2=5^2\) や、 \(5^2+12^2=13^2\) などがすぐに思い浮かびます。実は、この等式を満たす整数 \(x,y,z\) の組には名前が付いていて、「ピタゴラス数」といいます。

ピタゴラス数
\(x^2+y^2=z^2\) を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) をピタゴラス数といい、特に \(x,y,z\) が互いに素である組を原始ピタゴラス数という。ピタゴラス数は、整数 \(k,l\) を用いて\[ (x,y,z)=(k^2-l^2,2kl,k^2+l^2) \]と表せる。 \(k,l\) が
  • \(k\) と \(l\) は互いに素
  • \(k>l\)
  • \(k-l\) は奇数
を満たす任意の正の整数であるとき、またそのときに限り、組 \((x,y,z)\) は原始ピタゴラス数である。

こちらも証明は他に任せます。「ピタゴラス数」などをキーワードに調べれば、すぐに見つかると思います。上記の条件を満たす \((k,l)\) は無数に存在しますから、原始ピタゴラス数は無数に存在します。この式によって、すべての原始ピタゴラス数を漏れなく重複なく見つけることができます。例えば、最初に挙げた2組の原始ピタゴラス数は、\((k,l)\) がそれぞれ \((2,1),(3,2)\) の場合にあたります。

したがって、

\(n=2\) に対して、求める整数の組 \((x,y,z)\) は無数に存在し、上記の条件を満たす整数 \(k,l\) を用いて\[ (x,y,z)=(k^2-l^2,2kl,k^2+l^2) \]と表せる。

といえます。

\(n=1\) のとき

等式 \(★\) は、 \(x+y=z\) になります。ごく普通の、整数の加法の式になってしまいました。2つの正の整数 \(p,q\) を用いて表すなら、 \((x,y,z)=(p,q,p+q)\) となります。この3数が互いに素で、かつ重複がないようにするためには、次の条件が必要十分です。

1点目が、3数が互いに素であるための必要十分条件であることを証明します。

\(p\) と \(q\) の最大公約数を \(g\) として、互いに素な整数 \(p',q'\) を用いて \(p=gp',q=gq'\) と表します。 \(p,q\) が互いに素であることと \(g=1\) は同値です。また、このとき \((x,y,z)=(gp',gq',g(p'+q'))\) と表すことができ、 \(x,y,z\) が互いに素であることと \(g=1\) はやはり同値です*1。ゆえに、 \(p,q\) が互いに素であることは、 \(x,y,z\) が互いに素であることの必要十分条件です。

2点目で全ての組み合わせを見つけられることは、具体的な方法で示します。まず \((p,q)=(1,1)\) の場合を調べ、以降は \(p\) を \(2\) から順に \(1\) ずつ増やしていきます。それぞれの \(p\) ごとに \(q\) を \(1\) から \(1\) ずつ増やして \(p-1\) まで調べていき、 \(p,q\) が互いに素であれば \((p,q,p+q)\) は求める整数の組です。これにより、全ての組み合わせを調べ上げ、求める \((x,y,z)\) を重複も漏れもなく見つけ出すことができます。

\(n=1\) に対して、求める整数の組 \((x,y,z)\) は無数に存在し、上記の条件を満たす整数 \(p,q\) を用いて\[ (x,y,z)=(p,q,p+q) \]と表せる。

\(n=0\) のとき

等式 \(★\) に \(n=0\) を代入すると \(1+1=1\) になってしまいます。どんな整数 \((x,y,z)\) を持ってきてもこの等式は成り立ちませんから、

\(n=0\) に対して、求める整数の組 \((x,y,z)\) は存在しない。

ということになります。

\(n=-1\) のとき

等式 \(★\) は、 \(\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{z}\) になります。単位分数同士の和が再び単位分数となるものを探す問題です(今回は \(x=y\) でもいいのでエジプト式分数とは条件がやや異なります)。具体的な数字では \(\frac{1}{2}+\frac{1}{2}=\frac{1}{1}\) や \(\frac{1}{6}+\frac{1}{3}=\frac{1}{2}\) などが浮かびます。勘のいい人なら \(\frac{1}{n(n+1)}+\frac{1}{n+1}=\frac{1}{n}\) が思いつくかもしれません。一般的に表してみましょう。

\(z=st\) と置きます。 \(s,t\) は正の整数です。このとき、\begin{align} \frac{1}{z} & = \frac{1}{st} \\ & = \frac{t+s}{st(t+s)} \\ & = \frac{t}{st(t+s)}+\frac{s}{st(t+s)} \\ & = \frac{1}{s(t+s)}+\frac{1}{t(t+s)} \\ \end{align}ですので、 \(x=s(t+s),y=t(t+s)\) とします。この3整数の組 \((x,y,z)=(s(t+s),t(t+s),st)\) は等式 \(★\) を満たします。この3数が互いに素で、かつ重複がないためには、次の条件が必要十分です。

\(s\) と \(t\) の最大公約数を \(g\) として \(s=gs',t=gt'\) と表せば、 \((x,y,z)=(g^2s'(t'+s'),g^2t'(t'+s'),g^2s't')\) です。あとは \(n=1\) のときと同様に示します。

本当にこれで表せるものが全てなのでしょうか? \(\frac{1}{z}\) は他の方法では分解できないのでしょうか?

実は、\((x,y,z)\) が互いに素であるような分解の仕方は、この方法で全てを調べ上げることができています。\(z\) によっては\((x,y,z)\) が互いに素でないような分解もできますが、今回の問題設定では除外されます。例えば \(\frac{1}{12}+\frac{1}{12}=\frac{1}{6}\) ですが、これは \(\frac{1}{x}+\frac{1}{y}=\frac{1}{z}\) を満たす互いに素な整数の組 \((2,2,1)\) のそれぞれの値を6倍したものです。

この表し方で全ての場合を見つけ出せていることを説明します。まず、 \(z\) は任意の正の整数がありえます。そして、任意の正の整数は、必ず、互いに素な正の整数 \(s,t\) を用いて \(z=st\) と表せます。このとき具体的な \(s,t\) は、 \(z\) によっては何通りもあります。例えば \(z=60\) なら、 \(s>t\) なる \((s,t)\) として \((60,1),(20,3),(15,4),(12,5)\) の4通りがあります(互いに素でない \((30,2),(10,6)\) は今回は除外されます)。他方、例えば \(z=8\) だったら、 \((s,t)=(8,1)\) の1通りしかありません( \((4,2)\) は互いに素ではありません)。

さて、無事に \(z=st\) と置けたので、これを問題の等式に代入してみます。\[ \frac{1}{x} + \frac{1}{y} = \frac{1}{st} \]この等式の両辺に \(xy\) を掛けると、\[ y + x = \frac{xy}{st} \]となります。ここで、左辺は整数ですから、右辺も整数であり、 \(xy\) は \(st\) で割り切れる、すなわち \(xy\) は \(st\) を因数に持つことが分かります。 \(z\) に対して(条件を満たす)任意の場合の \(s,t\) について考えていること、 \(x,y\) は対称であることから、 \(x\) が因数 \(s\) を、 \(y\) が因数 \(t\) を持つことにして差し支えありません。残りの因数を \(\hat{x},\hat{y}\) として、 \(x=s\hat{x},y=t\hat{y}\) と表した \(x,y\) を、続けて等式に代入します。\begin{align} t\hat{y} + s\hat{x} & = \frac{s\hat{x}・t\hat{y}}{st} \\ t\hat{y} + s\hat{x} & = \hat{x}\hat{y} \\ 0 & = \hat{x}\hat{y} - t\hat{y} - s\hat{x} \\ st & = \hat{x}\hat{y} - t\hat{y} - s\hat{x} + st \\ st & = (\hat{x}-t)(\hat{y}-s) \\ \end{align}両辺を積の形にした等式を検討するために、ここで \(\hat{x}\) と \(t\) は互いに素であることを示します。

\(\hat{x}\) と \(t\) の最大公約数を \(g\) として、 \(\hat{x}=g\hat{x}',t=gt'\) と置きます。 \(y=t\hat{y}=gt'\hat{y},z=st=gst'\) ですから、 \(g\) は \(x,y,z\) に共通の約数です。 \(x,y,z\) は互いに素なので \(g=1\) となります。したがって \(\hat{x}\) と \(t\) もまた互いに素です。
同様にして、 \(\hat{y}\) と \(s\) も互いに素であることが言えます。このことから、等式\[ st = (\hat{x}-t)(\hat{y}-s) \]は、 \(s\) と \(t\) で綺麗に分離できて、\[ s = \hat{x}-t, t = \hat{y}-s \]となることが分かります。ゆえに、\[ \hat{x} = \hat{y} = t+s \]であり、\begin{align} x & = s\hat{x} = s(t+s) \\ y & = t\hat{y} = t(t+s) \\ \end{align}が得られます。

というわけで、 \((x,y,z)\) は間違いなくこの形で表せることが確認できました。具体的な数字で確認してみましょう。先ほど挙げた \(z=60\) の場合、 \((s,t)=(60,1),(20,3),(15,4),(12,5)\) の4通りがありましたから、 \((x,y,z)=(3660,61,60),(460,69,60),(285,76,60),(204,85,60)\) の4組が互いに素な整数解となります。 \(z=8\) では \((s,t)=(8,1)\) でしたから、 \((x,y,z)=(72,9,8)\) が求める整数解です。また、冒頭に挙げた \((2,2,1),(6,3,2),(n(n+1),n+1,n)\) は、それぞれ \((s,t)=(1,1),(2,1),(n,1)\) の時の解です。

\(n=-1\) に対して、求める整数の組 \((x,y,z)\) は無数に存在し、上記の条件を満たす整数 \(s,t\) を用いて\[ (x,y,z)=(s(t+s),t(t+s),st) \]と表せる。

\(n=-2\) のとき

等式 \(★\) は \(\frac{1}{x^2}+\frac{1}{y^2}=\frac{1}{z^2}\) になります。三平方の定理の分数バージョンといったところでしょうか。

\(n=-1\) のときと同様に、互いに素な正の整数 \(s,t\) を用いて \(z=st\) と置くと、同じような議論を経て、 \(x^2=s^2(t^2+s^2),y^2=t^2(t^2+s^2)\) が得られます。 \(x,y\) が整数であるためには \(t^2+s^2\) が平方数であればいいことから、これを \(w^2\) と置きましょう。 \(w\) は \(w^2=t^2+s^2\) を満たす正の整数です。

見覚えのある形が出てきました。これは、 \(n=2\) の時の等式 \(★\) と同じです。ということは、この等式を満たす \(t,s,w\) は、 \(n=2\) で見たような条件を満たす \(k,l\) を用いて\[ (t,s,w) = (k^2-l^2,2kl,k^2+l^2) \]と表せます。これを \(x,y,z\) に代入すれば、\[ (x,y,z) = (2kl(k^2+l^2),(k^2-l^2)(k^2+l^2),2kl(k^2-l^2)) \]となります。

例えば \((k,l)=(2,1)\) のとき \((x,y,z)=(20,15,12)\) が得られます。左辺に代入すると\[ \frac{1}{20^2}+\frac{1}{15^2} = \frac{3^2+4^2}{60^2} = \frac{5^2}{60^2} = \frac{1}{12^2} \]となり、確かに解になっています。

\(n=-2\) に対して、求める整数の組 \((x,y,z)\) は無数に存在し、前掲の条件を満たす整数 \(k,l\) を用いて\[ (x,y,z)=(2kl(k^2+l^2),(k^2-l^2)(k^2+l^2),2kl(k^2-l^2)) \]と表せる。

\(n≦-3\) のとき

等式 \(★\) は、 \(m=-n\) とおいて \(\frac{1}{x^m}+\frac{1}{y^m}=\frac{1}{z^m}\) になります。この等式を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在しません。このことを背理法で証明します。

\(m≧3\) に対して、等式 \(\frac{1}{x^m}+\frac{1}{y^m}=\frac{1}{z^m}\) … ※ を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) が存在すると仮定します。
等式 ※ の両辺に \((xyz)^m\) を掛けると\[ (yz)^m+(zx)^m=(xy)^m \]となります。 \(yz,zx,xy\) はいずれも正の整数ですので、 \((yz,zx,xy)\) を改めて \((x,y,z)\) とおけば、この組は等式 \(x^m+y^m=z^m\) を満たします。
しかしこれは、フェルマー・ワイルズの定理が示す、\(m≧3\) のとき \(x^m+y^m=z^m\) を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在しないことと矛盾します。
よって、等式 ※ を満たす正の整数の組は存在しません。

したがって、

\(n≦-3\) に対して、求める正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在しない。

となります。

まとめ

解答をまとめると次のようになります。

解答
方程式\[ x^n+y^n=z^n \]について、
  • \(|n|≧3\) および \(n=0\) に対して、この等式を満たす正の整数の組 \((x,y,z)\) は存在しない。
  • 互いに素な正の整数解が存在する \(n=2,1,-1,-2\) について、前掲の条件を満たす整数 \(k,l\) および \(p,q\) を用いて \((x,y,z)\) を表すと、
    • \(n=2\) に対して、 \((x,y,z)=(k^2-l^2,2kl,k^2+l^2)\)
    • \(n=1\) に対して、 \((x,y,z)=(p,q,p+q)\)
    • \(n=-1\) に対して、 \((x,y,z)=(p(q+p),q(q+p),pq)\)
    • \(n=-2\) に対して、 \((x,y,z)=(2kl(k^2+l^2),(k^2-l^2)(k^2+l^2),2kl(k^2-l^2))\)
    となる。

また、冒頭で説明したとおり、互いに素な正の整数解 \((x,y,z)\) に対して、任意の正の整数 \(r\) 倍した組 \((rx,ry,rz)\) も、 \(n\) が同じ等式を満たします。

以上により、全ての整数 \(n\) に対して、正の整数の組 \((x,y,z)\) が分かりました。めでたしめでたし。

……とは本稿ではなりません。冒頭でひとまず除外した、 \(x,y,z\) のいずれかが負や零である解について、あらためて考えてみましょう。

負の解

まず、負の数について。 \(n\) が偶数と奇数のそれぞれの場合について、方程式を満たす正の整数の組 \((a,b,c)\) から、正負を反転させる方法を考えます。

実際には \(n=0\) および \(|n|≧3\) のときは方程式を満たす正の整数の組はありませんから、 \(n\) が偶数のときとは \(n=±2\) の場合を、 \(n\) が奇数のときとは \(n=±1\) の場合を指すことになります。以上を整理すると次の表のようになります。

解のパターン \(x\)\(y\)\(z\)等式 \(n\) が偶数
\(n=±2\)
\(n\) が奇数
\(n=±1\)
\(n=0,\)
\(|n|≧3\)
移項せずに
符号を反転
\(+a\)\(+b\)\(+c\)\((+a)^n+(+b)^n=(+c)^n\) 成立成立 不成立
\(-a\)\(+b\)\(+c\)\((-a)^n+(+b)^n=(+c)^n\) 成立不成立
\(+a\)\(-b\)\(+c\)\((+a)^n+(-b)^n=(+c)^n\) 成立不成立
\(-a\)\(-b\)\(+c\)\((-a)^n+(-b)^n=(+c)^n\) 成立不成立
\(-a\)\(+b\)\(-c\)\((+a)^n+(+b)^n=(-c)^n\) 成立不成立
\(-a\)\(+b\)\(-c\)\((-a)^n+(+b)^n=(-c)^n\) 成立不成立
\(+a\)\(-b\)\(-c\)\((+a)^n+(-b)^n=(-c)^n\) 成立不成立
\(-a\)\(-b\)\(-c\)\((-a)^n+(-b)^n=(-c)^n\) 成立成立
移項して得られるもの
(解となる場合のみ)
\(+c\)\(-a\)\(+b\)\((+c)^n+(-a)^n=(+b)^n\) 不成立成立
\(-c\)\(+a\)\(-b\)\((-c)^n+(+a)^n=(-b)^n\) 不成立成立
\(+c\)\(-b\)\(+a\)\((+c)^n+(-b)^n=(+a)^n\) 不成立成立
\(-c\)\(+b\)\(-a\)\((-c)^n+(+b)^n=(-a)^n\) 不成立成立
正の整数解 \((a,b,c)\) から符号を変えることにより得られる解の一覧

零の解

次に、零について。零の冪 \(0^n\) は \(n>0\) でしか定義されませんので、 \(n≧1\) の場合についてのみ考えます。

以上を整理すると次の表のようになります。解の \(x,y,z\) のいずれかが \(0\) である場合は、他の値が負の数である場合も含めて、これが全てです。

解のパターン \(x\)\(y\)\(z\)等式 \(n\) が正の偶数\(n\) が正の奇数\(n≦0\)
\(x,y,z\) ともに零 \(0\)\(0\)\(0\)\(0^n+0^n=0^n\) 成立成立 \(0^n\)は定義されない
\(x\) のみ零 \(0\)\(+a\)\(+a\)\(0^n+(+a)^n=(+a)^n\) 成立成立
\(0\)\(-a\)\(+a\)\(0^n+(-a)^n=(+a)^n\) 成立不成立
\(0\)\(+a\)\(-a\)\(0^n+(+a)^n=(-a)^n\) 成立不成立
\(0\)\(-a\)\(-a\)\(0^n+(-a)^n=(-a)^n\) 成立成立
\(y\) のみ零 \(+a\)\(0\)\(+a\)\((+a)^n+0^n=(+a)^n\) 成立成立
\(-a\)\(0\)\(+a\)\((-a)^n+0^n=(+a)^n\) 成立不成立
\(+a\)\(0\)\(-a\)\((+a)^n+0^n=(-a)^n\) 成立不成立
\(-a\)\(0\)\(-a\)\((-a)^n+0^n=(-a)^n\) 成立成立
\(z\) のみ零 \(+a\)\(+a\)\(0\)\((+a)^n+(+a)^n=0^n\) 不成立不成立
\(-a\)\(+a\)\(0\)\((-a)^n+(+a)^n=0^n\) 不成立成立
\(+a\)\(-a\)\(0\)\((+a)^n+(-a)^n=0^n\) 不成立成立
\(-a\)\(-a\)\(0\)\((-a)^n+(-a)^n=0^n\) 不成立不成立
\(0\) を含む解の一覧( \(a\) は正の整数)

本当の全貌

以上をまとめるとこうなります。

方程式 \(x^n+y^n=z^n\) の整数解
方程式 \(x^n+y^n=z^n\) の整数解 \((n,x,y,z)\) は次の通り。
  • \(x,y,z\) がいずれも \(0\) でない解は、\(n=±1,±2\) のときのみ存在する。
    • そのような4つの \(n\) に対して、互いに素な整数解は、
      • \((+1,p,q,p+q)\)
      • \((-1,p(q+p),q(q+p),pq)\)
      • ただし、 \(p,q\) は互いに素で、 \(p>q\) もしくは \(p=q=1\) なる正の整数。
      • \((+2,k^2-l^2,2kl,k^2+l^2)\)
      • \((-2,2kl(k^2+l^2),(k^2-l^2)(k^2+l^2),2kl(k^2-l^2))\)
      • ただし、 \(k,l\) は互いに素で、 \(k>l\) かつ \(k-l\) が奇数である正の整数。
      として全て表せる。
    • 互いに素な整数解 \((n,x,y,z)=(n,a,b,c)\) から、任意正の整数 \(r\) を用いて \(x,y,z\) が正の整数である解 \((n,ra,rb,rc)\) が全て得られる。
    • \(x,y,z\) が正の整数である解 \((n,x,y,z)=(n,a,b,c)\) から、 \(x,y,z\) のいずれかが負の整数である解が全て得られる。
      • \(n=±2\) のとき、 \((n,-a,b,c),(n,a,-b,c),(n,-a,-b,c),(n,a,b,-c),(n,-a,b,-c),(n,a,-b,-c),(n,-a,-b,-c)\)
      • \(n=±1\) のとき、 \((n,-a,-b,-c),(n,c,-a,b),(n,-c,a,-b),(n,c,-b,a),(n,-c,b,-a)\)
  • \(x,y,z\) のいずれかが \(0\) である解は、 \(n≧1\) のときのみ存在する。
  • そのような整数解は、 \(m,a\) を正の整数として
    • \((m,0,0,0),(m,0,a,a),(m,0,-a,-a)\)
    • \((2m,0,-a,a),(2m,0,a,-a)\)
    • \((2m-1,-a,a,0)\)
    と表せるものが全て。
ただし、 \(x\) と \(y\) を入れ替えて得られる組み合わせは同一視した。

これで、全ての整数の範囲で方程式 \(x^n+y^n=z^n\) の整数解 \((n,x,y,z)\) が得られました。ようやく全貌が分かり、今度こそめでたしめでたし、となります。お疲れさまでした。

プロットしてみる

\(n\) ごとに、方程式の解となる \((x,y)\) を座標平面にプロットしてみました。黒色が互いに素な解の点、薄い灰色がその定数倍で、濃い灰色は \(x,y,z\) のいずれかが \(0\) となる解の点です。スライダをいじって \(-3≦n≦4\) の範囲で眺めてみてください。